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2010年04月27日
一つの場所にとどまって生涯を終える人もいれば、移動を繰り返して
とどまることを知らない人もいます。
それは、人だけではなく、モノも同じだと言える気がします。
僕の元に一本のギターがあります。このギターはYAMAHA FG-150
という機種で、もしかしたら、40代〜60代のギターが好きな人は
ピンとくるかもしれません。
1960年代 学生運動とフォークブームの中で、良質でしかも、安価な
ギターが求められていました。その時まだ大量生産できる国産のフォークギター
アコースティックギターは市場に存在していませんでした。
そこで、楽器メーカーYAMAHAが 安くて手に入りやすい大量生産型の
ギターを開発しました。
それが、このFG-150とFG-180のFGシリーズでした。FGとはフォークギター
の略。150が一万五千円 180が一万八千円という価格でした。
上の一枚は、僕がこのギターをてにいれてすぐの写真です。
僕のギターの師匠 カリフォルニアでTシャツのデザイン、プリントを
していた NAO MATUZASAさんとのセッションをプロのカメラマン
に撮影してもらいました。
つまり、このギターは日本で初めて国内生産されたギターの中の一本です。
と書くと非常にプレミア性の高いビンテージ物のように思われますが
実際のところ、安い価格で大量生産されたものなので、市場にも多く出回っており
今でも比較的安く手に入る物です。
ただ当初は一万五千円だったものが、先日中古屋で6万円位の値段が付いており
状態にもよると思いますがそれなりに評価されているとおもいます。
これらの機種は 鳴り がとてもいいとされており、鳴りのFGと呼ばれているようです。
日本のフォーク歌手 岡林信康や吉田拓郎もライブで使用していたとのことです。
僕がこのギターを手に入れたのは、1990年くらいだったと思います。
アメリカのサンフランシスコで学生をしていました。
ロック音楽が好きだった僕はギターが始めたくて、購入を考えていましたが、なんせ高額。
無駄遣いを控えていた僕は、いつか、いつかと思いながらギターショップで新品のギターをながめ
しかし、手を出しかねていました。
ある日、たまたま行ったスーパーマーケットの掲示板でにギターを売りますの広告掲示を
見て連絡をしました。売り主は偶然日本人。すぐに連絡を取り、ハードケースやカポ音叉や弦込みで
$40(6000円くらい)で買い取りました。非常に安い買い物だったと思います。
生産が1960年代なので、その当時で、すでに30年くらい経過した年代ものです。
ギターケースには、僕に売ってくれた人とは別の人の名字が書いてありました。
きっと売り主も、ファーストオーナーではなく他の誰かから譲り受けた
ものだったようです。
買いに行った時に、売り主の同居人は、ぽつりと「楽器ってさみしいときに なぐさめになるよね」と
言っていたのをいまだに覚えています。様々な人が様々な想いで、鳴らしてきたギターなのだと
思いました。
それからこのギターは、僕が鳴らし、僕のギターの師匠や友人が鳴らし、そして数回太平洋の上を行き来し、
いま本校の312教室にあります。僕が学生と遊ぶために持って来ました。
アメリカでたまたま、僕の手に渡り、今は岡山市のデザインの専門学校の教室の片隅でそのギターが生産された
当時には、存在しなかったくらいの若い学生たちの手で鳴らされている。
このギターがもし自分の経歴を振り返るのならば、どう感じるでしょう?
simple twist of fate 運命の一ひねりで いまここにいる不思議 そんな風に感じるのは人も物も同じかも知れません。
僕は、今から40年以上前に日本ではじめて国内生産された一本 個人的に言うなら
僕がはじめて手に入れた思い入れのあるギターが、学生達の手の中で
鳴らされているのを微笑ましく見ています。
「運命のちょっとした一ひねり」Simple Twist of Fateは、ボブディランの歌からとりました。
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